あなたの常識を論破する経済学|三橋貴明|書評

本日は、僕が今までに読んだ経済に関する書籍の中で「(個人的に)一番の良書」をご紹介します。

それは三橋貴明さんの『あなたの常識を論破する経済学』です。僕が三橋さんのことを知った以降に出版された書籍はほとんど(数十冊)読んでいるのですが、その中でも特におすすめなのがこの本です。質に関してはどの書籍も高く申し分ないのですが、この本に関しては、質の高さに加えコストパフォーマンスも圧倒的に高いと感じました。正直僕は、この価格で購入できる経済に関するこれほどの良書をほかに知りません。

目次

章の構成は次の通りとなっています。

あなたの常識を論破する経済学の章構成
  • 第1章:デフレ脱却に「法人税減税」は不要である
  • 第2章:財務省のレトリックにはもう騙されない
  • 第3章:アベノミクスは巻き返せる!?
  • 第4章:公共事業は本当に「悪」なのか?
  • 第5章:「エネルギー安全保障」は強化する段階に来ている
  • 第6章:不平等な結果を招いた統一通貨ユーロの誤算
  • 第7章:TPPは海外企業・投資家に特権を与える不平等条約

MMT(現代貨幣理論)

この本は2016年に出版されています。そのため昨今日米で話題のMMT(現代貨幣理論)という文言こそ出ていませんが、この本にもMMTと同様の理由で日本の財政破綻の可能性が0であることを理論的に記載してあります。

一部を要約してご紹介すると以下のことについて言及しています。

  • 自国通貨を発行できる政府は、自国通貨建て国債でデフォルト(債務不履行)することはあり得ないし、歴史上も例がない。日本の国債発行は、外国人(海外)保有分を含め、100%日本円建て(外貨建て国債の発行残高はゼロ)である
  • ギリシャが実質的にデフォルトしたのは、国債が「共通通貨ユーロ建て」だったため。共通通貨ユーロの発行権限を持つのはフランクフルトのECB(欧州中央銀行)である
  • 国債の発行の制約は、「インフレ率」である。

インフレ率に関する正しい指標についても言及

インフレ目標について

インフレ率については、CPI(消費者物価指数)、コアCPI(生鮮食品を除く総合)、コアコアCPI(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)、GDPデフレーターなど、複数の指標があります。日本銀行は、上記のうち「コアCPI(生鮮食品を除く総合)」でインフレ目標2%を設定していますが、これについては大きな問題があります。それは、コアCPIにはエネルギーの物価変動が含まれているため、国内のエネルギー需給に関係なく、為替や海外情勢によるエネルギーの物価変動によってインフレ目標が達成される可能性があることです。例え誤った経済政策を実施しても、エネルギーのほとんどを海外に依存している日本においては、そのエネルギーの物価上昇によりインフレ目標を達成してしまうこともあり得ますし、「景気が良くなっているので増税ね。」と利用されかねません。

フィリップス曲線とGDPデフレーター

ところで、なぜ政府や日銀がインフレ率2%を目標に設定しているかというと、(需要>供給により)景気を良くすることに加え、雇用の改善(失業率の低下)も目的としているためです。

インフレ率と失業率には強い相関関係があり、その関係を示したものに「フィリップス曲線」というものがあります。大雑把に言うと、「インフレ率の上昇に伴って、失業率は低下する。」というものですね。本書では、IMFのデータを基に作成した日本のフィリップス曲線(1998年~2014年)の図が示されていますが、インフレ率2%で失業率が2%台(日本では失業率2%程度が完全雇用の状態)に低下しています。ただ、上記のインフレ率は日本銀行が定めているコアCPIではなく、GDPデフレーターで表したものです。前述したとおり、コアCPIでは日本の景気(需給)に関係なく海外情勢によって物価が変動してしまいますから、コアCPIベースのインフレ率が上昇しても失業率は改善しないということは十分あり得ますし、そういった意味ではコアCPIでのインフレ目標というのは適切ではありません

GDPデフレーターとは

・GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP

最後に

僕は今までに経済に関する書籍を数十冊読み漁りましたが、今では「反緊縮財政」「反自由貿易」「反規制緩和」を主張する方の書籍しか読んでいません。理由は簡単。これらが、多くの国民を豊かにする「経世済民」を実現するために必要な事実だからです。加えて、これ以外の主張は嘘であることが多く、読むのが時間の無駄だからです。もちろん、いついかなる時も正しい政策というのはありませんが、少なくとも、現在まで20年以上もデフレが継続している日本において必要な政策は上記の政策です

経世済民の実現のために、まずは多くの方にこの本の内容を知ってもらいたいと思います。ぜひ、ご一読ください。