インフレーション(インフレ)とデフレーション(デフレ)という言葉は、おそらくほとんどの方が知っているかと思いますが、次のような認識ではないでしょうか?
・インフレ:物価(物やサービスの値段)が上がること
・デフレ:物価(物やサービスの値段)が下がること
経済に明るくない方であれば上記の内容で認識しているかと思います。
そのため「値段が下がるんだったらデフレの方がいいじゃん。」と思ってしまう方もいるようです。
ですが、事はそう単純ではないのです…
目次
インフレ・デフレの分類など
一口にインフレ、デフレと言ってもその発生原因や物価上昇の程度等によって次のように呼ばれています。
- クリーピング・インフレーション
- ギャロッピング・インフレーション
- ハイパー・インフレーション
- ディスインフレーション
- ディマンドプルインフレーション
- コストプッシュインフレーション
- ハイパーインフレーション
- デフレスパイラル など
悪いインフレ・良いインフレとは
コストプッシュインフレ(悪いインフレ)
インフレと言っても、なんでもかんでも物価が上がればよいわけではありません。
ハイパーインフレは当然ダメですが(そもそも極めて稀な現象であるため日本で心配することは杞憂にすぎませんが…)、身近なものではコストプッシュインフレが好ましくありません。
そのコストプッシュインフレとは、供給サイドの要因で物価が上昇することを言います。主に円安や原材料価格の高騰によって引き起こされるインフレのことです。
ところで、皆さんは日本のエネルギー自給率が何%かご存じでしょうか?
日本のエネルギー自給率はかなり低く、約8%程度しかありません。石油・石炭・天然ガス(LNG)といった化石燃料は海外からの輸入に大きく依存しており、化石燃料の海外依存度は約90%となっています。
先日ホルムズ海峡近くでタンカーが攻撃を受けましたが、石油の海上輸送の約4割が通過するこの場所を日本向けのタンカーが通れなくなるような事態になれば価格の高騰は避けられません。
このように日本国内の需要動向に関係の無い海外情勢や為替の影響によって物価が上がっても、日本企業の利益や国民の所得向上につながるわけではないためコストプッシュインフレは好ましくないと言えます。
ディマンドプルインフレ(良いインフレ)
一般的に「インフレが良い」と主張する人々が言っているのは、この「ディマンドプルインフレ」のことです。
- demand(需要)
- pull(牽引、引く、引っぱる)
上記の文字通り「需要が供給を上回ることで引き起こされる物価の上昇」です。
なぜディマンドプルインフレが良いのか
このディマンドプルインフレがなぜ良いのかというと、次の通りです。
- 儲かりやすい経済状況
- 雇用環境の改善、失業者数の減少と所得の向上
- 税収の増加
まず1.については、需要が旺盛な状況であるため利益を得やすいことは言うまでもありませんよね。供給が追い付かなければ販売価格を上げても良いですし、「稼ぎ損ない、儲け損ない」といった機会損失を防ぐために生産性(供給能力)向上のための設備投資も行います。
次に2.については、1.と同様に需要が供給を上回っている(需要>供給)状況で「有効求人倍率」や「失業率」が改善します。求人が多い状況であるため、失業者(求職者)はより良い労働条件や給与の高い会社に就職しやすくなります。また、優秀な社員の転職を防ぐ目的もあり企業の売上が昇給や賞与などで還元されやすくなります。
たまに「日本が経済成長しないのは雇用の流動化が足りないからだ。」という記事を目にするのですが、原因と結果が逆ではないでしょうか?経済状況・雇用環境が良ければ、ほっといてもより良い労働条件・待遇を求めて転職が活発になります。現在のデフレ下で雇用の流動化うんぬんかんぬん言っている人は、要するに従業員を解雇しやすくしたい(解雇規制の緩和)という思惑なのでしょう。
最後に3.について、私たちは所得から税金を納めていますので、企業業績の好調や所得水準の上昇に伴い法人税や所得税といった基幹税収が増加します。
まとめ
- インフレには種類があり、「ディマンドプルインフレ」であることが重要
- ディマンドプルインフレ状況下は、単に物価が上昇しているだけでなく「儲かりやすい経済状況」「良好な雇用環境」「税収が増加する」状況下にある